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IoT(Internet of Things)という単語が見慣れるようになり、ありとあらゆるものがインターネットと繋がるようになりました。
住宅業界でも「ZEH」や「HEMS」という単語をよく見かけるようになりました。
読み方や今までの住宅と何が違うのか、ご説明します。
ZEHとは?
ZEHで「ゼッチ」と読みます。
ゼロエネルギー住宅と言われることもありますが、同じ意味です。
ZEHはNet Zero Energy Houseの略で、簡単にいうと 住宅で省エネと創エネ(エネルギーを創り出すこと)を実現することで、住宅としては消費するエネルギーをゼロ以下にすること です。
断熱性を高め、高効率給湯器やLED照明の設置で省エネ、さらに再生可能エネルギーの太陽光発電などで、電力を家庭で作って賄うということになります。
従来は断熱性を高めた省エネという住宅の形がもてはやされましたが、それよりも一歩進んだ住宅の形といえますね。
今までの省エネ住宅とは違い、断熱性の向上と省エネ、創エネの3点がセットで初めてZEHになります。
ここでいう消費エネルギーは正確には、定義としては「一次エネルギー消費量」を対象としています。
冷暖房、換気、給湯、照明のことを指し、家電で使われるエネルギーは対象にはなっていません。
家庭で消費されるエネルギーの割合では、給湯や冷暖房が占める割合は高いのですが、時代の流れとともに家電で使われるエネルギーの割合が増えています。
そこで、一つ上に基準を設けて、家電で消費されるエネルギーまでを含めて、消費エネルギーゼロを目指しているビルダーもいます。
国としては、ZEHを2020年までには新築住宅では半数の採用を目指しています。
さらに、2030年までの目標は新築住宅でZEHが平均的なものにすることです。
必須条件ではありませんが、省エネの相乗効果が期待できるので、ZEHには後半で説明するHEMSも採用されていることが多いです。
なぜ増えているのか
現在では締め切られていますが、平成29年10月まで補助金制度がありました。
将来的にはZEHを特別なものではなく、一般的なものにすることが国としての目標なので、支援制度があるわけですね。
他にも、ZEH住宅に力を入れているビルダーが、ZEHビルダーとして登録されています。
その数も平成28年の第1回の公募では、500社ほどだったものが、平成29年には6,000社を超えるまでに増えました。
登録したビルダーが積極的にZEHを宣伝したので、一般の人の目に触れる機会が多くなりました。
登録ビルダーはZEHの建設にも目標を持って積極的に取り組んでいます。
まだまだ少ないですが、ZEHの建売も販売され始めました。
住宅の性能でメーカーを選ぶ時代でもあるので、ZEHは一つの基準になりつつあります。
ZEHのメリット
ZEHはエネルギー使用量が抑えられるので、省エネで光熱費がお得になりそうというイメージは持ちやすいかもしれませんが、他にもいい面があります。
それは、断熱性能がいい住宅ということは、それだけ身体にもいいということです。
ヒートショックという言葉を聞いたことのある人も多いでしょう。
高齢者を中心に浴室でヒートショックによる入浴中の事故が、年間で1万件起きています。
断熱性が良い住宅では、家の中での温度差が少なくなり、ヒートショック予防に効果的なのです。
また、ZEHのために必須ではありませんが、蓄電池も設置すると災害時の予備電源として利用ができます。
ZEHのデメリット
もちろん、全部が全部いいということはありません。
設備費用で初期投資が掛かるのがデメリットと言えます。
太陽光発電の設置は、平均的に設置されることが多い4kwで150万円程度かかるので、ZEH住宅を建てるためにはそれなりに予算の検討が必要です。
建築費も高断熱にするためにコストアップになり、100万円~200万円は変わってきます。
太陽光発電と建築費で300万円はコストアップになる でしょう。
太陽光発電を屋根に乗せるためには、屋根の勾配にも制限が出てきます。
また、実際の発電能力も気象状況の影響で左右されます。
建てたときには問題がなくても、その後に日照を遮るような建物が近くに建ってしまい、発電量が少なくなってしまうケースもあります。
蓄電池などの設備を設置すると、場所を取ってしまうというデメリットもあります。
他に、断熱性を高めるためには、気密性を高める必要があるため、大きな窓や開放的な住宅は不向きです。建築的な制限が発生します。
特に窓は最も熱が逃げやすいので注意が必要です。
HEMSとは
HEMSはヘムスと読み、Home Energy Management Systemの略です。
住宅の電気やガスの消費エネルギーをモニターで見える化、家電を制御して、省エネを実現するためのシステムです。
ZEHは住宅のことで、HEMSはシステムの名前です。
また、スマートハウスに採用されているのがHEMSです。
HEMSは日本よりもアメリカで普及が進んでいるといわれ、世界的な動きでもあります。
HEMS機器に家電を連動させ、HEMS機器を通して、電気料金の安い時間に家電を使うといった自動制御も可能になるのです。
昨今よく聞くようになったIoTの住宅版ということですね。
モニター
モニターでは、過去の光熱費と比較ができるので、使いすぎや節約できていることが一目瞭然です。
電気料金も値上がりしている中で、電力の小売全面自由化が始まり、ますます世間の光熱費への関心は高くなっています。
「見える化が省エネに繋がる」という観点もHEMSのポイントの一つです。
「使用量を確認できる→無駄遣いを減らせる」という構図です。
キャラクターを用いたモニター画面を採用しているメーカーもあり、家族で関心を持ちやすい工夫もされています。
経済産業省によれば、家庭で使用される電気量は、家電の多様化や大型化で昔よりも増えています。
スマートメーター
今では、新築ではスマートメーターが最初から設置されています。
順次既存の住宅もスマートメーターに切り替わっています。
通信機能を持つので、電気料金の各戸検針が不要で、遠隔で電気料金のデータが取れるものです。
スマートメーターの通信機能を利用した電力網をスマートグリッドといいます。
ロスのない送電システムが可能になるのです。
電力会社にメリットがあるのはもちろんのこと、消費者にもメリットがあります。
スマートメーターでは、30分ごとに使用量の送信ができるので、HEMSと連動することで、部屋ごとや時間ごとの細かい単位で使用量の変化をチェックできるのです。
もう一つのポイントである家電の制御は、外出先でもインターネット環境があれば自宅の家電を操作できるようになることです。
エアコンの操作を屋外にいながらする、照明のスイッチをオンにする、なんてことも可能なのです。
将来的には、HEMSも2030年には全家庭への普及が国の目標です。
住宅1軒で行うHEMSのほか、ビル版のBEMS(ベムス:Building Energy Management System)や工場版のFEMS(フェムス:Factory Energy Management System)、地域版のCEMS(セムス:Community Energy Management System)のように、もっと大きな規模でエネルギー管理をしていこうというシステムもあります。
地域全体で電気消費量の管理をして、需要と供給を最適化をする未来も夢ではありません。
HEMSを導入するには
HEMSを導入するには、HEMSの機器を、無線で家電と繋ぎ家電を制御をする仕組みと、HEMS用の分電盤も必要です。
それに伴い、いままでの分電盤よりもやや大きくなり、スペースを取るので気をつけましょう。
ZEHとは違い、システムなので導入のハードルは低いです。
インターネット環境と専用の機器を設置すれば始められます。
費用はメーカーにより、機器の価格が異なりますが、10万円~20万円弱かかります。
新築でないと導入できないものではなく、既存の住宅でも導入できるので、国の目標も全家庭への普及なのです。
断熱性能や耐震性能が良い住宅は、もはや当たり前の時代になり、今は家電をいかにコントロールして無駄のない生活を実現するかという時代に入っています。
soraki
宅地建物取引士を取得し、ディベロッパーのマンション営業として企画、集客、顧客の住宅ローンの審査まで幅広く携わる。 新築分譲マンションのモデルルームでの接客をしながら、審査の通りにくい顧客にも対応し、住宅ローンを提案。 その後、マンション管理会社に転職し、フロント営業となる。修繕の提案や長期修繕計画の作成など、管理業務主任者として分譲マンションの管理組合運営に関わる。 |
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