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大地震が起きると住宅の耐震性能が話題になりますね。
耐震を語る上では「昭和56年」がキーワードです。この年に建築基準法が大きく改正され、旧耐震基準と新耐震基準という分け方がされます。
耐震・制震・免震の違いから、耐震基準の視点から中古住宅の注意点と旧耐震基準の家を売る方法まで分かりやすく解説します。
耐震・制震・免震の違いとは?
地震への強さというよりも、仕組みから異なります。
建物を丈夫につくることで地震でも倒壊しない仕組みです。
壁で建物を支える構造である2×4(ツーバイフォー)工法が地震に強いと言われるように、柱や梁を丈夫につくったり壁を増やすことで地震に耐えます。耐震改修で新たに筋交い(すじかい)を設けるのもこの考え方の一種です。
地震の揺れを軽減する考え方ではないので、他と比べると最も揺れが大きく感じられますが、コストは安く済みます。
一般的な木造住宅やマンションなど多くの建物は基本的に耐震で建てられます。
地震の振動を抑制するという考え方のため「制振」と書くこともありますが同じ意味です。
ダンパーなどの制震装置を躯体へ設置します。地震が起こり、建物に伝わった揺れをこのダンパーが吸収することで、軽減する仕組みです。
地震に限らず、風など建物に伝わる揺れをダンパーで吸収することもできます。
各社が様々な制震構造を打ち出しているので、免震ほどコストをかけず取り入れられる制震は、注文住宅で用いられることがあります。
地面と建物の間の基礎部分に免震装置を設け、地震の揺れを建物へ伝えにくくする仕組みです。基礎部分に振動を吸収するためにダンパーを併用することも多いです。
免震装置には数種類がありますが、ゴムと鋼板を重ねたものを用いることが多く、数年前に免震ゴム偽装が問題になりましたが、これはこの免震装置に使われているものです。
コストが最もかかりますが、地震の揺れは高層の建物では、上層階程揺れが大きくなるので、マンションの中でも高層のときに用いられます。
室内にいても揺れが感じにくく、室内の被害が少なくて済みます。
ただし免震の仕組み上、横揺れを防ぐ効果は高いものの、縦揺れには効果が薄いので、直下型地震には弱い面もあります。
どれが一番優れているのか
地震の揺れで建物をどう守るか考え方が違うため、優劣がつけられませんが、3つの方法をまとめると、次のようになります。
- 安価であるとともに普及している数は耐震
- コストを削りつつ、揺れを軽減させることができるのは制震
- コストは最もかかるが、揺れを最も防げるのは免震
公共建築やタワーマンション、ビルなどを中心に免震は増えていますが、住宅では耐震が依然として多いです。
免震のタワーマンションを広告で見ることも珍しくなくなりましたが、コストに見合った消費者へのアピールになるかという面や、施工が容易ではない事情があり、急速に普及してるわけでもありません。
中古住宅と耐震
大きく建築基準法が改正されたのが、昭和56年6月1日です。この改正で建物により強度が求められるようになりました。
これ以降に建築確認を受けた建物を新耐震基準と呼び、これより前は旧耐震基準と言われます。
建築確認とは、工事着工前に受けるものなので、完成したときが昭和56年6月1日以降でも、建築確認がそれより前であれば、旧耐震基準である可能性があります。
特にマンションは規模によっては、完成の1年~1年半前に確認申請を受けるので、注意が必要です。
築年数でいえば、築37年前後を境に旧耐震基準の建物であるということです。
旧耐震基準では、震度5で倒壊しないことが基準で、震度6以上は規定がありませんでした。改正後の新耐震基準では、震度5で損傷が少ないことと、さらに震度6~7程度で倒壊しないことが基準になりました。
つまり、旧耐震基準では震度6以上の地震では倒壊のリスクが高く、震度5クラスでも建物の被害がある可能性が高いのです。
いまや震度6の地震は珍しくない印象です。2018年6月の大阪北部地震では、震度6弱のエリアもあり、旧耐震基準の住宅ではリスクが高かったと言えます。
平成28年の熊本地震では、震度7が記録されたこともあり、大きな被害がありました。
特に揺れが大きく被害も大きかったエリアの調査結果では、旧耐震基準の建物の倒壊率は28.2%であるのに対して、新耐震基準の建物の倒壊率は10.9%で歴然とした差がありました。
築年数が新しいほど、無被害の割合も高く、古い住宅ほどリスクが高いと言えます。
旧耐震基準住宅の確認方法
以上のように心配しなければならないのは、旧耐震基準の住宅です。
不動産会社は、新耐震基準の建物には重要事項説明で耐震診断について説明義務がありませんが、旧耐震基準の中古住宅の売買には、耐震診断の有無を重要事項説明をしなければなりません。
しかし「耐震診断を受けなければならない」という宅建上の規定はないので、耐震診断をしていなければ、「耐震診断はしていない」という説明のみです。
総務省の調査では、旧耐震基準の時期の住宅で耐震診断をしている割合は13.5%です。
耐震診断はお金のかかることなので、このように実施されていないことも多いです。
新耐震基準の住宅でも耐震診断を実施しているのは10.3%ありますが、ほぼ耐震性能を満たしており、やはり改正前後では安全面での差があると言えるのです。
安全面以外のデメリットもあり、住宅ローン控除や住宅購入費を親から援助してもらうときの非課税制度など、住まいに関する税制優遇は、新築住宅や新耐震基準の住宅を原則としています。
国としては、旧耐震基準の建物は耐震改修を推奨しており、旧耐震中古住宅で税制の優遇を受けるためには、耐震改修を行う必要があります。
インスペクションと住宅性能表示制度
中古住宅の売買では、耐震診断よりもインスペクション(住宅診断)と既存住宅住宅性能表示制度が身近です。
中古住宅では、古いほど資料も少なく情報がないまま売買がされることが多いですが、インスペクションや住宅性能表示がある住宅は、より安心の売買ができるようになります。
インスペクションとは近年関心が高まっており、住宅の劣化具合を診断し報告書にまとめたものです。外観から床下まで業者が調査を行います。
住宅性能表示制度は、住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づいて平成12年に始まりました。国交省の登録機関である第三者の目で建物をチェックします。
耐震性能を始め、遮音性能や維持管理のしやすさなどが等級ですべて数値化され、異なる住宅でも数値で性能の比較ができるのです。
新築マンションでは比較的取得が多いのですが、中古の既存住宅の住宅性能表示は認知度が低く、活用例が少ないです。
インスペクションも住宅性能表示も中古住宅売買では、現状は必須項目ではありませんが、客観的な資料として今後需要が高まっていくと考えられます。
耐震改修の方法
木造住宅での耐震改修には、免震装置や制振装置を新たに設置する方法もありますが、多いのは金具による柱や梁の接合部の補強、耐力壁を増やす、基礎の補強のような方法です。
この中でも金具による接合部の補強はコストも比較的かからないので、最もよくあるパターンです。
耐震改修の平均施工費用は100~150万円ですが、市町村によっては助成金制度もあります。
中古住宅では、新耐震基準の建物を選択する方がベターではありますが、適切に耐震改修を行うことで税制優遇も受けられるようになります。
旧耐震基準の家を売る方法
相続などで取得した築年数が経過している家を売る場合、旧耐震基準の住宅がほとんどでしょう。
先述したとおり耐震改修やインスペクションを実施して売りやすくするのも手ではありますが、お金をかけても一向に売れない可能性がありますし、もしかすると建物を解体して新築を建てる需要の方がある土地かもしれません。
そのため先ずは家のプロである不動産会社から査定を取得して相場を知り、アドバイスを受けることが大切になってきます。
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soraki
宅地建物取引士を取得し、ディベロッパーのマンション営業として企画、集客、顧客の住宅ローンの審査まで幅広く携わる。 新築分譲マンションのモデルルームでの接客をしながら、審査の通りにくい顧客にも対応し、住宅ローンを提案。 その後、マンション管理会社に転職し、フロント営業となる。修繕の提案や長期修繕計画の作成など、管理業務主任者として分譲マンションの管理組合運営に関わる。 |
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