親が認知症になった!家を売るため絶対に押さえるべきポイントとは

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2019.06.21

目次

平均寿命が延びたことで、2025年には日本国内の認知症患者が700万人規模に達するという統計予想が発表されました。

「物忘れがひどい」、「判断能力の低下」、「慣れていたことができない」など、認知症になると脳の働きが低下することで様々な症状が表れます。

このような症状が見られ日常生活に支障をきたすと、何らかのサポートが必要になってくると思います。

では不動産の所有者である親が認知症になってしまった場合、家を売ることができるのでしょうか?

「親が認知症で介護施設へ入所するため、親名義の家を売って費用にしたい!」と考える人もいることでしょう。

ここでは、認知症になってしまった親の家を売る方法から絶対に押さえるべきポイント、現役不動産屋である筆者の考えまで分かりやすく解説しています。

認知症になった親の家は売れる?

不動産売却において所有者本人の意思は最優先されます。

けれども認知症と診断された人は、物事を判断する能力が不足しているため法律で単独での財産処分などを規制しているのです。

例えば今日はいいと言っていたことが翌日はダメとなったり、言ったこと自体覚えていないとなってしまうと相手方はとても不安定な立場になってしまいます。

こうした問題を解消するために成年後見制度が利用されます。

成年後見制度では本人の判断能力に応じて、「後見(重度)」「保佐(中度)」「補助(軽度)」の3つに分類されています。

どの類型に該当するかは、医師の診断書や面談を判断材料として最終的に家庭裁判所から審判を受けることで決まります。

(※不動産取引の実務上、売主が認知症の場合は「後見」に該当するケースが多いです。)

後見開始の審判を受けた認知症本人のことを成年被後見人と呼びます。

また後見開始の審判に合わせて成年被後見人には、家庭裁判所が成年後見人を保護者として選任します。

自分の判断に責任を持たない未成年者に親権を持った人が保護者になるイメージです。

成年後見人には認知症本人の財産管理について代理権が与えられているため、法律行為(契約)のサポートが可能となるのです。

従って認知症になってしまった親の家を売るには、成年後見人が本人に代わり売買契約を行うことで可能になるのです。

実務上、売却には家庭裁判所の許可(居住用不動産処分許可)が必要となってくるため、契約段階で関係各所へ全て内諾を得てから、裁判所へ申立を行いましょう。

成年後見人となるには?

成年後見人は、成年被後見人の法定代理人にあたります。

成年被後見人の面倒を見てきたから当然になれるものでもなく、通常の代理契約のように委任状があればなれる訳でもありません。

成年後見人となるための一般的な流れは以下の通りです。

1.医師へ診断書の作成依頼
2.家庭裁判所へ後見開始の審判申立
3.家裁の調査官による被後見人や後見人候補者との面談や調査
4.精神鑑定(本人の状態によって行わない場合もあり)
5.後見開始の審判および成年後見人の選任

また以下の項目に当てはまる場合、成年後見人にはなれません。

・未成年者(未成年でも結婚していれば可)
・家裁で解任された法定代理人や保佐人、補助人
・自己破産経験者
・被後見人に対して訴訟した人やその配偶者および直系血族
・行方不明者

落とし穴ともとれる絶対に押さえるべき成年後見制度のポイント

家を売るためには成年後見人になるしかないのですが、この制度は気をつけておかねばならない落とし穴ともいえるポイントがいくつかあるのです。

ここで挙げるポイントをしっかり理解してから手続きを開始しましょう。

成年被後見人のために財産を管理する

成年後見人(あなた)は成年被後見人(認知症を診断された親)のために財産を管理する必要があります。

財産目録や入出金の報告書などを作成し、毎年家庭裁判所に提出し被後見人が亡くなるまで資産管理の報告をしなければなりません。

また管理財産は介護したり支援する家族のことは考えられていないため、同一生計で暮らしていた配偶者や子、孫であっても本人の利益につながらないお金の引き出しは裁判所に否認されてしまうことがあるのです。

ですから今まで家族の生活費として本人口座からお金を使っていた場合でも、後見開始によって自由にお金を使えなくなってしまいます。

もちろん相続税対策として被後見人の資産から生前贈与などは一切できなくなります。

被後見人となる方が一家の大黒柱であった場合、家族の生活が立ち行かなくなる可能性だってある落とし穴ですから、申立前にしっかり対処しておきましょう。

必ず親族が成年後見人に選任される訳ではない

以前は成年被後見人の面倒を見ていた親族がそのまま成年後見人に選任されるのが一般的でしたが、近年では弁護士や司法書士など第三者が選任されるケースが多いです。

内閣府が発表した成年後見人等と本人との関係別件数データ(平成27年)によると、第三者が後見人に選任されたケースが全体の7割以上にのぼります。

特に被後見人の資産が多額であったり、利害関係で親族同士もめている場合は第三者が選任される可能性が高まります。

資産額によって増減はありますが、弁護士や司法書士などの専門職の後見人には報酬が月に数万円ほど発生することを覚えておきましょう。
(家族が後見人の場合でも報酬をもらうことは可能です)

先述のとおり本人の利益につながらないことは裁判所に否認されてしまうため、家族が口座からお金を引き出す時は、お金の使い道を第三者の後見人となった弁護士や司法書士に逐一お伺い立てしなければなりません。

親族が後見人になっても監督人が付くケースもある

アナタが後見人になったとしても「後見監督人」を家庭裁判所に付けられることがあります。

監督人がつくケース

・弁護士などの専門職の関与が必要と認められる場合
・親族間で揉めている場合
・被後見人の資産が多額の場合

成年後見監督人は一般的に弁護士や司法書士が選任されることが多く、裁判所への財産管理の報告を監督人経由で行います。

監督人の付保を拒むことはできず、ボランティアではないため監督人へ報酬(月額1~2万円)を支払わなければなりません。

成年被後見人は役員や一定の資格者になれない

成年被後見人は判断能力が不足しているため、役員や弁護士、医師などの一定の資格者として職務を行うことができなくなります。(欠格事由に該当)

被後見人が有資格者で事務所の専任資格者として国や都道府県知事に登録しているケースでは、代わりの人を立てなければ廃業することになります。

また同族会社のような家族で経営をして被後見人の名義だけ借りているような場合は、特に注意が必要です。

被後見人が株式を保有している状態で成年後見人が第三者に選任されてしまうと会社の経営に口を出してくることも想定されます。

家を売ることとは直接関係がない話ですが、成年後見人制度を利用する際には気を付けておかなければならないポイントです。

成年後見制度で筆者が思うこと

残念ながら認知症を完治させる手段は今の医療では存在しません。

認知症と診断されてしまうと、家を売ることが途端に難しくなってしまいます。

成年後見人を立てれば家を売ることができますが、安易に答えを出すと思わぬ落とし穴があることを紹介してきました。

どういう目的があって成年後見人を立てる必要があるか慎重に考える必要があります。

ここで筆者である金井は、成年後見制度自体に不満を抱えています。

成年後見制度を利用しても、あまりメリットが見当たらないからです。

今の成年後見制度は法曹関係者に被後見人のお金が流れる仕組みになっているとしか思えません。

東京家庭裁判所では報酬額の目安として月額2万円という基準があります。

後見人が管理する財産の総額 基本月額報酬
1,000万円以下 2万円
1,000万円超~5,000万円以下 3~4万円
5,000万円を超 5~6万円

言い方が悪いですが認知症の被後見人が10年間生存し続けると、弁護士や司法書士などへ最低でも240万円以上支払うことになります。

けれども家族が被後見人の介護や支援のために使った費用でも口座から出金するには逐一報告が必要で、場合によっては否認されてしまうという融通の利かない制度です。

そして弁護士などの第三者後見人が管理している、被後見人の資産を横領して逮捕されるニュースが度々報道されていることも忘れてはいけません。

認知症のような障害疾患は普段から顔を合わせていれば変化に気付けるはずです。

まだ認知症が軽度であったり元気なうちであれば、選択肢は広がります。

認知症と診断されても、決して慌てることはありません。

後見開始を申立する前に対策をとっておくと良いでしょう。

意思がはっきりとれる段階であれば生前贈与や負担と制約の少ない家族信託という手段を検討したり、家を売ることも可能です。

少しでも違和感を感じたら面倒なことを後回しにせず、家族全員で問題に向き合っていくことが一番大切であると筆者は考えます。

金井

生まれも育ちも仕事も大好きな横浜で人生の大半を過ごす。 地場の建設会社にて施工管理を学ぶ(某有名人宅の新築工事に工事主任として1年間従事)。 同社で不動産の営業、企画にも携わる。 その後、大手不動産会社へ転職し管理と仲介営業を経て2017年に不動産会社を起業。 保有資格:宅地建物取引士、二級建築施工管理技士

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