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少子高齢化と人口減少で、住宅は余っています。
空き家の数も年々増えており、まったく手入れがされなくなってしまった空き家は周辺に悪影響を及ぼすこともあります。
政府としても制度の見直しを行い、空き家の撤去に本格的に力を入れ始めました。
空き家の数の増加と今後の見通し
平成25年の住宅・土地統計調査によれば、 全国に空き家は820万戸ある と言われています。平成5年では空き家は448万戸という結果だったので、20年で空き家問題が深刻になっているのを克明に表しています。
全国の総住宅数が6,063万戸なので、そのうち空き家が占める割合は13.5%にもなります。
都道府県別に見ると最も空き家率が高いのは17.2%の山梨県です。最も低い宮城県でも9.1%が空き家です。
都心部なら極端に空き家が少ないかというとそういうことではなく、東京都でも10.9%が空き家です。
地方を中心に空き家の割合は、今後も高まっていくでしょう。
戸建てとマンション、それぞれの空き家の実態
平成25年の調査では、前回の5年前の調査と比較して増えた空き家が62.8万戸でしたが、このうち79%が一戸建てです。
中古住宅の市場も増えているとは言いつつも、日本は新築を建てることを続けているので、今後も人口減少時代と重なり、ますます空き家は深刻になることが予想されます。
住む人がいなくなって手入れがされなくなった古い一戸建ての空き家はなんとなくイメージがつくと思います。
後ほど説明する空き家対策特別措置法では、倒壊の危険性がある住宅の撤去を行政が調査、執行する権限を強めたものです。
さらに、相続で一戸建てを引き継いだときも、早めに売却をすれば譲渡所得税が課税されない枠が作られたので、一戸建ての空き家の対策は少しずつ進んでいます。
しかしあまり話題になりませんが、マンションの空き家問題もこれから深刻化すると思われます。
空き家は築年数が古くなるほど、その割合が増加します。
国土交通省のマンション総合調査では、平成28年の調査で築40年超のマンションは63万戸あり、10年後の平成38年には、計算上では172.7万戸が築40年を超えます。
新築マンションの供給が少なくなっていると言うのも原因の1つですが、マンション全体の築年数の平均がじわじわ上がっています。
マンションにおける空き家は、管理の面でも大きなダメージがあります。
分譲マンションでは所有者が管理組合と言う団体を構成し、マンション内の管理を運営していくことになります。
管理組合では所有者が順番で役員を担うことになります。
高齢化で役員のなり手不足や、さらに所有者が亡くなったことで、相続によってマンションの所有者になった人は管理運営に関心が薄く、古くなって建て替えの話が出ても同意が得られにくくなる問題が発生します。
管理の運営をしたくても、そのために動いてくれる人がいなくなってしまうのです。
マンションは築年数が古いほど、所有者の平均年齢が上がり、空き家の率も上がります。
平成25年の住宅・土地統計調査では、居住者が60歳以上のみというマンションは建築年が1970年以前では52%で、1971年~1980年では48%という結果が出ています。
築50年近くになると、2棟に1棟のマンションが60歳以上の人しかいないのです。
築年数の古いマンションに限らず、少子高齢化で世帯主の年齢は上がっており、国土交通省の調査では、マンションに住む世帯主の年齢は、平成11年度から比べると、60歳代、70歳代以上の割合が増加する一方、50歳代以下の割合が減っています。
平成25年度は60歳代以上が50.1%、40歳代以下が26.8%となっており、少子高齢化が進んでいるのが分かります。
マンションに住む人は60代がメインの世代にすでになりつつあるのです。
防犯面や維持管理での不安
空き家は、建物が古くなり今にも壊れそうで放置されたままでは危険な住宅、というイメージがありますね。
しかし、そこまではいかなくても人が住んでいない住宅は、空き巣に狙われやすく、何も家財がないから心配ないと思っているのは危険なのです。
取られるものがないと思っている住宅でも空き巣に入られることは珍しくないのです。
さらに、住んでいないと住宅はどんどん悪くなります。
例えば、水周りには、排水管の臭いが部屋に上がってこないようにするために、封水という水が常に溜まっているようになっています。
しかし封水も、少しずつ蒸発してしまうため、封水切れを起こすと排水管の空気が部屋に漏れてしまったりします。
室内は締め切ったままで、換気もされないと湿度が溜まり、カビの発生にも繋がります。
このような問題を解消するために、空き家を巡回管理してもらうサービスもあります。
どうしても空き家にせざる得ないときに定期的に不在の住宅の中の換気や、清掃をしてくれます。
主に不動産会社が行なっており、費用としては簡易的なものであれば月額5,000円~8,000円程度ですので利用しやすいです。
空き家対策特別措置法
増え続けている管理者もいない空き家について本格的に対処していくために平成27年2月に施行されました。
この特別措置法では空き家について2つの定義をしています。
人が住んでいない建物
景観を損ねていたり、倒壊の危険がある建物
主な変更点は、今までは登記記録を確認することで、空き家の所有者を確認していましたが、今後は固定資産税の情報から所有者を把握することができるようになります。
登記記録は所有者が亡くなってもそのままにされていることが多いので、相続がされていても氏名が変わっておらず、現在の所有者までたどり着きにくいものだったのです。
調査のために、行政が立ち入ることも認められました。
特定空き家等については、 指導・勧告・命令を順に行うことができ、行政の権限で最終的には空き家を撤去できることまで踏み込んでいます。
勧告までされると、固定資産税の優遇が受けられなくなるので、税金が高くなります。
今後は、倒壊の危険が伴うような住宅はそのままにしておくとデメリットが大きくなります。
実際に、特定空き家等に対して平成27年度~平成29年度で助言・指導の実績は8,000件を超えています。
空き家の売却で税制の優遇がある
国としては積極的に空き家をなくしていくために、空き家の売却で非課税の枠を設けています。
空き家の発生を抑制するための特例措置として、空き家の売却では譲渡所得から3,000万円の特別控除をすることが平成28年度の税制改正で始まりました。
一人暮らしの人が亡くなったとき、その家に住む人がいなくなり相続で人の手に渡っても、誰も住むことがなく、そのまま空き家になってしまうことが多いからです。
相続で住宅を引き継いだ人が有効活用してくれれば、空き家の問題は起きません。
しかし、固定資産税はどんなに古くても、更地よりも建物があった方が軽減されて安くなることと、古い住宅は取り壊すにもお金がかかるため、多くの住宅がそのまま放置されるのです。
そういった空き家を減らすための税制改正です。
概要は、故人が独居していた住宅を相続日から起算して3年を経過する日の属する12月31日までに、家を売ることで譲渡所得から3,000万円を差し引くことができます。
この税制を受けるための条件は次のようなものです。
- 故人が生前独居していた住宅であること
- 現行の耐震基準に満たない住宅はリフォームをしてから売却するか、取り壊して更地にして売却する
- マンションは対象外
- 相続から譲渡までの期間に賃貸などの使われ方をせずにずっと空き家だったこと
- 売却額が1億円を超えない
相続されてから賃貸など空き家ではなかった期間があると、税制優遇の対象外にされてしまいます。
この税制優遇の目的は、相続後、速やかに耐震基準を満たさない住宅を改善または取り壊し、売却を促すことで、空き家を発生させないようにすることです。
soraki
宅地建物取引士を取得し、ディベロッパーのマンション営業として企画、集客、顧客の住宅ローンの審査まで幅広く携わる。 新築分譲マンションのモデルルームでの接客をしながら、審査の通りにくい顧客にも対応し、住宅ローンを提案。 その後、マンション管理会社に転職し、フロント営業となる。修繕の提案や長期修繕計画の作成など、管理業務主任者として分譲マンションの管理組合運営に関わる。 |