相続税の税率や基礎控除って?相続で損しないために知っておきたい計算方法

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目次

2015年1月から大幅な税制改正があり、納めなければならない人が増えた「相続税」。

相続税は改正以前、富裕層のみに関係する税金と言われてきました。

相続税改正前と改正後の統計データ

西暦 死亡者数(a) 課税件数(b) 課税割合(b)/(a)
2014年分(改正前) 1,273,004人 56,239件 約4.4%
2015年分(改正後) 1,290,444人 103,043件 約8.0%

(※財務省統計より)

上記表から2014年と2015年を比べると死亡者数は微増であるのに、課税件数と課税割合が約1.8倍に増えていることが分かります。

昨今では、かなり身近に感じるようになった税金と言えます。

ここでは相続税の説明から計算方法、特例や相続税対策についても解説します。

そもそも相続税とは?

あなたが評価額1億円の土地を相続したとき、「相続税はいくらだろう?」と考えることと思います。

けれども消費税などのように、税率が何%で税額はいくらと単純に計算はできません。

相続税とは亡くなった人(被相続人)から相続を受ける人(法定相続人)が相続や遺贈などによって、基礎控除を超える遺産を受け継いだときにかかる税金のことです。

何やら漢字が多くなってきましたが、一つずつ言葉の解説をしていきます。

まず法定相続人には法律で決められた相続を受ける優先順位があります。

※亡くなった人が有効な遺言書等を残していた場合は、そちらが優先します。

法定相続人の範囲

亡くなった人の配偶者 常に法定相続人
亡くなった人の子ども 第1順位
亡くなった人の直系尊属(父母・祖父母) 第2順位
亡くなった人の兄弟姉妹 第3順位

※相続を放棄した人は初めから相続人でないものとして次順位に移ります。
※内縁関係の人は原則として相続人に含みません。

そして法定相続人が遺産分割で合意できなかった場合には、法律で決められた割合(法定相続分)で遺産を分割します。

法定相続分

配偶者と子どもが相続人の場合 配偶者1/2・子ども1/2
配偶者と直系尊属が相続人の場合 配偶者2/3・直系尊属1/3
配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合 配偶者3/4・兄弟姉妹1/4

※配偶者以外の相続人が複数いる場合は原則均等割り

相続税を計算するうえで先にでてきた「基礎控除」という言葉をご存知でしょうか?

基礎控除=3,000万円+600万円×法定相続人の数

この基礎控除で求めた金額は必ず引くことができるので、遺産総額が基礎控除を超えない場合、免税となり相続税を申告する必要はありません。

基礎控除額を超える遺産を相続した場合は、下記の速算表で税額を計算することができます。

相続税速算表

法定相続分に応じた課税対象額 税率 控除額(後で引ける)
1,000万円以下 10% なし
1,000万円超~3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円超~5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円超~1億円以下 30% 700万円
1億円超~2億円以下 40% 1,700万円
2億円超~3億円以下 45% 2,700万円
3億円超~6億円以下 50% 4,200万円
6億円超~ 55% 7,200万円

相続税の計算

実際に相続税を実際に計算してみましょう。

計算例

夫(被相続人)が遺産総額8,000万円を残し、妻と子2人(長男・長女)が法定相続人のケース
※特に遺産分割にかかる遺言等はないものとする
STEP1.まず基礎控除額を計算します。

ポイントとして無条件に3,000万円と法定相続人1人当り600万円の控除ができる点です。
妻、長男、長女なので法定相続人は3人です。

8,000万円-3,000万円-1,800万円(600万円×3)=3,200万円


STEP2.法定相続分から課税額を計算します。

法定相続分は上記の表から妻が1/2、子ども1/2なので長男が1/4、長女が1/4となります。

  • 妻:3,200万円×1/2=1,600万円
  • 長男:3,200万円×1/4=800万円
  • 長女:3,200万円×1/4=800万円

STEP3.相続税速算表から税率をかけて控除額をひき、税額を計算します。

妻は課税額が1,000万円を超えているので、税率が15%、税額控除が50万円です。
子どもは1,000万円以下なので、税率は10%となります。

  • 妻:1,600万円×15%-50万円=190万円
  • 長男:800万円×10%=80万円
  • 長女:800万円×10%=80万円

190万円+80万円+80万円=350万円…相続税総額


STEP4.相続税が求められたので、実際の分割も法定相続分に応じて分割すると下記の通りとなります。

  • 妻:350万円×1/2=175万円⇒0円※配偶者の税額軽減
  • 長男:350万円×1/4=87.5万円
  • 長女:350万円×1/4=87.5万円

よって長男と長女それぞれの87.5万円+87.5万円の175万円が納税額となります。

うれしい税額の軽減や控除!逆に加算されるケースも…

相続税には様々なケースにおける税額の軽減や控除の措置があります。

配偶者の税額軽減

先の計算例でも登場しましたが、配偶者には以下のどちらか多い金額まで相続税額の軽減措置があります。

  1. 1億6,000万円
  2. 配偶者の法定相続分

このため亡くなった人に余程の資産がない限り、配偶者は相続税が発生しないと考えておいて良いでしょう。
ただ税額の軽減があるからと単純に配偶者に全ての遺産を相続してしまうと、子の世代への相続時に多額の相続税が発生してしまうため、遺産が多額の場合は生前から賢い贈与を行う必要があります。

未成年者が相続した場合の税額控除

未成年者への相続についても、相続税額より一定額が控除となる制度があります。

未成年者が満20歳になるまでの年数×10万円が控除となるのです。

例)13歳2ヶ月の場合
20-13=7(年)
※1年未満の月数は切り捨てになります。
10万円×7年=70万円

仮に控除額が相続税額を超えた場合は、扶養義務者への相続税からも差し引くことが可能です。

障害者が相続した場合の税額控除

障害者への相続についても、相続税額より一定額が控除となる制度があります。

障害者が満85歳になるまでの年数×10万円が控除となります。
(特別障害者の場合は1年につき20万円)

仮に控除額が相続税額を超えた場合は、扶養義務者への相続税からも差し引くことが可能です。

いいこともあれば逆もしかりで、場合により税額が加算されることもあることを覚えておきましょう。

相続税額の2割加算

亡くなった人の一親等の血族(代襲相続の場合の孫を含む)及び配偶者以外の人である場合には、相続税額に2割相当が加算されます。

今から始める相続税対策

相続税の計算方法や特例が分かったところで、相続税対策について解説します。

相続財産には現預貯金はもちろん証券や株式、土地や建物の不動産、生命保険も含まれます。

現金は残っている金額がそのまま課税対象となってしまうため、遺族としては現金が多いと納税の負担も多く困りますが、逆に少ないと葬儀費用や相続税を納税する場合、残された遺族には負担になります。

では相続税対策は何から始めるといいのでしょうか?

生前贈与や資金援助の利用

現預貯金を減らすため生前に贈与をする場合、相続時精算課税か暦年課税を選択することができます。

相続時精算課税による贈与は読んで字のごとく、相続が発生したときに再計算されて相続税を納めるため、相続財産が減るわけではありません。

今後値上がりしそうな土地や株でしたら、相続時精算課税の適用によって節税の効果は期待できるでしょう。

ここでは暦年課税による生前贈与をおすすめします。

暦年課税の場合、1月から12月の1年間に1人当たり110万円の基礎控除があります。

子や孫へ複数年にわたって贈与を行えば、現預貯金を減らすことができます。

注意点として、相続開始前3年以内に贈与した財産は、相続税を計算するうえで贈与時の時価にて加算する必要があるため、元気な今から始めたほうがいいのです。

そして贈与の方法ですが、基礎控除の範囲で毎年子や孫の口座に振込しておけばいいと考えている人は実際多いと思います。

この方法は税務署から否認されてしまう可能性が高いため、実務的に行われているのは贈与の度に贈与契約書を作成し、敢えて基礎控除を超えて贈与を行い、少額でも贈与税を払う方法です。

また毎年同じ時期に同じ額を贈与するのは、連年贈与と税務署から指摘をうけ、贈与総額に課税される可能性があるため、気を付けましょう。

現行法令では、2021年末までに子や孫に住宅取得のため資金を援助するのも現金を減らす有効な手段です。

資金援助を受ける年の1月1日現在で20歳であったり、所得が2,000万円以下であったりと適用要件があるため、事前に確認しましょう。

(住宅取得等資金の贈与に関する記述:国税庁ホームページより)

生命保険への加入

もしも入っていないのであれば、生命保険に加入するのは始めやすい節税手段の一つです。

死亡保険金には、法定相続人一人当り500万円の非課税枠があるのです。

そして受取人にはできるだけ配偶者ではなく、子どもにすることをオススメします。

先の特例で記載したとおり、配偶者は1億6,000万円まで相続税は非課税のため、節税のメリットがなくなってしまうためです。

また子どもがいいなら孫は?と考える人がいて当然かもしれませんが、相続税の節税を考えているのであれば、それだけはやってはいけません。

生命保険における非課税枠は、あくまで法定相続人が受取人となることが要件になります。

このため、子どもが生存している場合や孫が養子縁組をした場合を除き孫は法定相続人には当たらないため非課税になりません。

加えて孫は相続税2割加算の対象にもなりますし、今までコツコツ行ってきた3年以内の生前贈与も無効になる可能性もあります。

相続税の節税のために生命保険加入を考えている人は、受取人を配偶者・孫ではなく子どもにすることを必ず覚えておきましょう。

現金を不動産へ換える

多額の現預貯金がある場合、その額がまるまる課税対象となってしまうため、土地などの不動産に変えることをオススメします。

そして土地には賃貸物件を建てましょう。

賃貸の不動産を所有すれば将来に渡り賃貸収入が見込めますし、更地から貸家建付地に区分が変わることによって、20~30%相続税評価額が下がるため節税に繋がります。

現役不動産屋の視点から申し上げると、可能な限り都心へのアクセスがいい物件を探しましょう。

都心の物件は高額になってしまいますが、郊外の土地を今から購入してアパートやマンションを建設しても賃貸経営のリスクが高い物件を所有し、将来的には負の動産を相続することになってしまいます。

今後日本の人口減少と超高齢化社会は必ずやってきますので、人が集まる人気のエリアであれば賃貸需要は多く、賃貸収入が著しく減少することもないためオススメです。

また相続時の土地の価格は、相続税路線価をもとに算定されます。

相続税路線価は、地価公示価格の8割程度になるよう国税庁が指定するので、相続財産に土地があって相続税額が気になる場合は、今から調べておいて損はないでしょう。

土地価格についてはコチラ

相続税まとめ

ここまで相続税について書いてきましたが、累進課税によって相続財産が多額になればそれだけ納税額も多額になります。

誰しも進んで相続税を納めたいとは考えないハズです。

家族間で遺産などお金の話をするのは、あまり気持ちのいいことではありませんが、生前贈与や資金援助を上手く活用すれば、適法に節税が可能となるため利用しない手立てはありません。

きちんと生前に相続の話ができていれば、相続人同士揉めることもありませんが、日頃から関係が悪かったり意思疎通ができていないとトラブルは必至です。

「相続」が「争族」とならないことを祈るばかりです。

金井

生まれも育ちも仕事も大好きな横浜で人生の大半を過ごす。 地場の建設会社にて施工管理を学ぶ(某有名人宅の新築工事に工事主任として1年間従事)。 同社で不動産の営業、企画にも携わる。 その後、大手不動産会社へ転職し管理と仲介営業を経て2017年に不動産会社を起業。 保有資格:宅地建物取引士、二級建築施工管理技士

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