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ワンルームマンション投資は不動産投資のいまや代表格です。
低金利で頭金なしでも始められ、定年後には毎月お金が入ってくる、そんなイメージがある人も中にはいるでしょう。
ワンルームマンション投資であまり語られない落とし穴があるので、検討している方はまずはしっかりと把握しておきましょう。
買ってすぐには収益が上がらない
サラリーマン大家の多くが、ローンで投資用マンションを購入しますよね。
投資用マンションの価格もピンからキリまであります。
東京で月8万円ほどの家賃を設定しようとしたとします。
物件価格が1,500万円~2,000万円であれば駅徒歩圏内で築5年間以内のマンションが買えます。
首都圏でもう少し頑張って新築で購入して不動産投資を始めたいのであれば、物件価格は2,500~3,000万円弱です。
サラリーマンの人はローンで不動産投資を始める方がほとんどでしょうから、返済の負担もポイント です。
2,000万円を30年返済にすると毎月の返済が8万円台になるので、家賃収入とほぼ同等になります。
空室にさえならなければ、なんとかやっていけます。
家賃以外にも経費がかかるので、実際にはローン返済と家賃が同等ですと、毎月は2~3万円の出費になります。
ワンルームマンション投資では、この数万円の出費で何十年後には不動産が丸々手に入るという営業もされます。
買ってすぐではローン返済で家賃収入が消えていくことが多いからです。
それなのに ローンを完済した時には、築30年のマンションになっています。
物価の上昇が続いていない限り、現在の試算通りの家賃で入居者がいる保障は低いように感じますよね。
経費がかかる
ワンルームマンションを所有するとランニングコストがかかります。
かかる費用は下記のようなものがあります。
管理費と修繕積立金は入居の有無にかかわらず所有者が毎月払わなければなりません。
管理費は管理手数料とは異なります。
マンションの共用部の清掃や共用部の光熱費は所有者全員で割って管理費として払います。
自主管理でなく管理会社へ委託していればワンルームマンションで月6,000円程度見ておきます。
修繕積立金は築浅であれば1,500~2,000円で済みますが、築20年~30年になってくると修繕積立金は1万円近くに上がってくるでしょう。
築年数が古くても修繕積立金が他よりも安い物件は、一時金の徴収を行なっているか、そもそもマンション一棟としての修繕積立金が足りていないと思われますので、おすすめできません。
新築、築浅は年間10万円を超えます。土地の固定資産税もかかるので、立地によっても違ってきます。
毎月1万円以上は見ておきたいところです。
毎月の返済は2,000万円を30年返済で金利3%とすると、月約84,000円です。
毎月3,000円程度です。
入居者の募集から契約、家賃の集金もすべて自身で行うなら別ですが、投資用マンションは住んでいるエリアで買うとは限りませんから、管理会社に依頼します。この管理会社には専有部の管理をすべてお任せすることになります。
素人にはない家賃の滞納や空室対策のノウハウがあるので安心です。
手数料が3,000円程度の定額制の所と家賃の3%や5%といった設定のところがあります。
中古物件も経費は安くない
先ほど紹介したもの以外に、経費は他にも問題点があります。
東京のワンルームマンションの家賃の平均が大体8万円です。
東京でかつ新築であればもう少し高い設定でも新築、築浅の間は入居が見込めますね。
地方であれば、新築ワンルームで家賃6万円台と言うところもあります。
先ほど説明した経費はローン返済以外で2万円以上かかっています。
毎月の家賃収入だけでローンを含め維持費をすべて賄うのは厳しいでしょう。
今は新築のマンションの価格が上がっており、リーマンショック時の価格を底に、ずっと上がっています。
新築・築浅が高ければ、古い中古を安く買えばいいと思うかもしれません。
1,000万円以下で中古マンションを購入しようとすると、だいたい築30年近いものがターゲットになります。
築30年の物件ですと、大きなリフォームがされていなければ、間取りが今のトレンドに合っていません。
平米数もいまの平均的なワンルームマンションの20㎡以上を下回る物件も珍しくありません。
昔の間取りは1Kであれば、洋室ではなく和室になっていますし、リビングダイニングよりも寝室に広さを取っています。
空室にしないためにもリフォームやリノベーションが必須でしょう。
築年数が経つほど修繕積立金が上がることが一般的なので、ローン返済は軽くなっても、他の費用が高くなることもあり得ます。
こうした事情から本格的に家賃収入が期待できるのは、ローンの返済が終わるのは20年先や30年先です。
しかも当然綺麗な物件の方が好まれますから、築年数が経つと家賃は今よりも下がることも考えなければなりません。
金利も将来はどうなっているか分かりません。
ローン完済を待って家賃収入を得る以外には、家を売ることをしても損にならないまで所有し、総合的に見て収益が得られた判断できた時点で売却してしまう方法があります。
しかし、この方法では、定年後の収入の一部にしたい考えている人にはメリットがなくなります。
利回りの罠
投資用マンションの広告でよく見る言葉に「利回り」があります。
これは例えば購入金額が2,000万円の物件で、月10万円の家賃収入があったとします。年間で120万円の家賃収入になります。
この場合の利回りは120万円÷2,000万円×100= 6%利回りになります。
ちなみに 利回り6%は投資用マンションの新築であれば平均 です。
でもこの式には家賃収入しか組み込まれておらず、毎月かかる経費が入ってないことに気づきますね。
経費が入っていない利回りは表面利回りといいます。
これに対して経費も含めた実質利回りを出してみます。
管理費月6,000円、修繕積立金月2,000円が12ヶ月かかると、年間で96,000円の経費がかかることになります。
120万円 - 96,000円=1,104,000円
1,104,000円÷ 2,000万円× 100 =5.52%
先ほどよりも少し下がりました。
しかしこれには固定資産税が含まれていませんので、実質はもう少し下がっておかしくありません。
空室になると、ローン返済と維持費で10万円近くが毎月飛んでいってしまいます。利回りは満室が続かなければ絵に描いた餅です。
ちなみに利回りを高くするためには、購入金額を下げることが最も効果的です。
そのため、価格の安い築年数の古い物件の方が広告での表面利回りが高くなっています。
10%を超える利回りを見ることもあります。
ただし、築年数が古くなれば年間の家賃収入は少なくなり、ランニングコストは高くなっています。
修繕費がかかる
新築で投資用マンションを購入すると、10年程度は住宅設備も故障することなく使えます。
しかし築15年ほどになると、水回りは古さが目立つようになるため、空室対策にもリニューアルを検討したいところです。
入居者が変われば、細かいところで壁紙の貼替えやフローリングの張替えの必要も出てきますし、ランニングコスト以外にも維持費はかかります。
持ち家の人は感じることですが、住宅の修繕は意外とお金がかかるのです。
ましてや賃貸に回すということは、入居者によって劣化具合が異なります。
お金を全く掛けないのも選択肢としてはありますが、修繕がされている物件とされていない物件は何年後かに明らかに差が出てきます。
ローンが組みにくくなる
投資用マンションのローンを組むと、それ以降のローンが組みにくくなることがあります。
特に自宅を住宅ローンで購入しようと考えている方は要注意です。
住宅ローンの審査には、その他の借り入れも審査に組み込まれるから です。
その他の借り入れとはよくあるのはマイカーローンやキャッシング、リボルビング払いです。
これと同等に投資用ローンが扱われるのです。
赤字黒字にかかわらず、借入の計算に組み込まれ、平均的な年収のサラリーマンでは自宅用の住宅ローンまで新たに借りることは困難です。
通る可能性があるとすれば、投資用ローンは事業用として審査してもらう方法です。
唯一、個人の借り入れとは分けて、審査してもらうことができれば通る可能性もあります。
絶対に通らないということはありませんが、敬遠する銀行が多く、自宅を購入する際の選択肢が限られてきます。
税制の優遇が少ない
投資用マンションの購入は自宅の購入と違い税制の優遇がほとんどありません。
もちろんローンの金利も一般の住宅ローンの金利は使えませんので、相場としては2%~5%になります。
住宅ローン控除も使えませんし、売却のときに利益が出ても自宅であれば使える特別控除が使えません。
まとめ
投資というと、不動産以外には株や投資信託などがあります。
不動産はそれらと比べて流動性が低いと言われます。
売りたいと思った時にすぐ買い手がいないことや、ローンの残債が多すぎて売却できないことがあるからです。
ただ、すぐには売れなくても不動産の価値はゼロにはなりません。
駅徒歩10分以内で利便性のいいところ、今後も過疎化の心配がないなど、需要がなくならないところで購入すれば買い手が見つからないことはありません。
日本はバブル期に比べると不動産は安くなっています。
しかし世界的に見ると不動産価格は上がってきています。
ローンを組んでしまうと負債のデメリットが大きいですが、不動産を所有すること自体は価値がなくならない点では、優れているともいえます。
ワンルームマンション投資をする場合、それぞれのメリットとデメリットを理解してから取り組むようにしましょう。
soraki
宅地建物取引士を取得し、ディベロッパーのマンション営業として企画、集客、顧客の住宅ローンの審査まで幅広く携わる。 新築分譲マンションのモデルルームでの接客をしながら、審査の通りにくい顧客にも対応し、住宅ローンを提案。 その後、マンション管理会社に転職し、フロント営業となる。修繕の提案や長期修繕計画の作成など、管理業務主任者として分譲マンションの管理組合運営に関わる。 |